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理念Idea

当法人は、医学界と産業界の連携により、化粧品等による国民の皮膚健康被害を早期に発見し、
これを最小化することを通じ、我が国をより安全で安心な国とすることを目的とする。

定款第一章4条の「事業」より

理事長挨拶

SSCI-Netの名称は、皮膚安全性症例情報ネット(Skin Safety Case Information Network)の頭文字から作られました。

一般社団法人SSCI-Netは、医師(主に皮膚科医)から皮膚の健康被害や安全性についての質の高い症例情報を収集し、その情報を企業と行政、あるいは医師へ役立つ情報にまとめて提供し、産学官連携で情報を活用することによって、化粧品等による皮膚の健康被害を最小化し、より安全で安心な国にすることをめざしています。

このような一般社団法人を設立することになったのはなぜか、私の皮膚科医としての研究歴と、日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会や、日本皮膚科学会、日本アレルギー学会の活動の歴史を簡単に振り返りお話します。

1976年3月名古屋大学医学部を卒業し医師となった私は、一年間のローテート研修の後に、翌年4月に皮膚科医となりました。名古屋大学では故早川律子先生に師事し、接触皮膚炎、化粧品の安全性、美容皮膚科などを専門領域として研究活動をしてまいりました。1991年に名古屋大学から医学部皮膚科学講師として藤田保健衛生大学に移り、2000年に教授となりました。25年の歳月が流れ、2016年3月に定年で退任し、現在は4月1日から医学部アレルギー疾患対策医療学講座教授として研究を続けています。

皮膚科医になった1977年当時は、かぶれたあとにシミができる黒皮症という化粧品による健康被害が社会問題になっていました。この黒皮症問題は産学官連携により、原因物質を解明し、また、企業が化粧品への使用を自主規制することによって、患者さんは減少し、症状も改善し解決にいたるという貴重な経験をいたしました。

私は、その後も化粧品等による皮膚の健康被害、特に接触皮膚炎について、また、その安全性についての研究を続けました。その後、日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会 理事長、パッチテスト試薬共同研究委員会 委員長を務め、接触皮膚炎症例の情報を収集し、問題の抽出と対策にあたってまいりました。

日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会のパッチテスト試薬共同研究委員会では2010年から化粧品等による接触皮膚炎症例の情報を学会員よりアンケート調査していました。この研究は、年度が終わった4月に全国に一斉に症例のアンケート調査を行い数ヶ月後にデータの集計を完了し解析していました。その間、2011年5月に加水分解コムギ末含有石鹸による経皮感作後コムギ製品摂取による即時型食物アレルギーの症例が多発し(2014年10月20日までに合計2,111人)自主回収になり、大きな社会問題になりました。日本アレルギー学会は、化粧品中のタンパク加水分解物の安全性に関する特別委員会を2011年7月に組織し、私はその委員長を拝命し、症例情報の収集、診断方法の開発、診断基準の作成、原因抗原の解析、予後調査などの研究を行いました。一方、当該石鹸による皮膚障害が、2010年度、2011年度の日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会のアンケート調査においても多数例が報告されていました。しかし、この情報の収集は1年後に行われたものでした。

この健康被害事例の対応を行う過程で産学官連携したSSCI-Netの構築が必要であると痛感し、2013年4月から厚生労働科学研究補助金をいただき、化粧品等のアレルギー確認方法確立に関する研究を開始しました。この研究は、パッチテスト等で原因を確認できた症例の情報を速やかに収集するための、症例登録システムを構築すること、また、原因となった化粧品等の成分パッチテストを行うより確実な方法を検討することでした。健康被害を最小化するためには、医師からの精度の高い情報を収集することが極めて重要であり、そのためには、精度の高い検査ができる専門医を養成し、成分情報を提供する企業の協力を得て、行政ともこの情報を共有して国をあげて、生活者に対しより安全で安心な製品が提供される環境作りが必要と考えました。

2013年7月にいわゆる美白剤のロドデノール誘発性脱色素斑が多数発生し、大きな社会問題になりました。産学官連携SSCI-Net構想にのっとり、速やかに、ロドデノール配合美白化粧品による脱色素斑症例の情報収集を行い、原因解明、治療方法の情報を医療者および患者さんに提供するために日本皮膚科学会は、ロドデノール含有化粧品の安全性に関する特別委員会を立ち上げ対応にあたりました。この経験を通して、SSCI-Net構想は生まれ進化してきました。

このたび、これまでの多くの協力者の志が一つになり、一般社団法人SSCI-Netが誕生し「症例情報でつなぐ皮膚の安全」を目指すことになりました。どうか、みなさまのご協力とご支援をお願いします。

2016年4月1日
 一般社団法人 SSCI-Net 理事長
松永佳世子